読売新聞[人生案内]に、妻の愛情が感じられない30代後半の会社員男性の投稿。 妻は同世代でフルタイムの共働き、小学生と未就学児の4人家族。男性は仕事も家庭も不満はないものの、妻の愛情が感じられないのが唯一不満とのこと。
子どもと昼寝をしていたら子どもにだけ毛布がかけられていた。10年ほど前に結婚、今は5年ほど夫婦生活がなく部屋は別々。話題は子どものことだけ、料理や洗濯は夫が担っている。妻の穏やかな人柄は好きで離婚は望んでいないものの、唯一妻の愛情が感じられないのが不満との相談。
長く同じ屋根の下で暮らしていると、夫婦の関係は静かに形を変えていきます。かつては燃えるようだった感情も、やがて穏やかな灯火へと移ろうものです。ただ、その灯が「消えかけている」のか、「見えにくくなっている」だけなのか――そこを見誤ると、心の距離はさらに広がってしまいます。
今回のご相談は、ちょうどその境目に立っているように見えます。
「不満はない。ただ、愛情が感じられない」。
この言葉は一見穏やかですが、実は深い違和感を内包しています。
たとえば、長年手入れをしていない庭を思い浮かべてください。雑草は生い茂っているものの、花が完全に枯れたわけではない。ただ、水をやらず、手をかけなかった年月が、その美しさを覆い隠している状態です。今のご夫婦は、その庭に似ています。
5年間、夫婦生活がないこと。会話が子どもの話題に限られていること。寝室も別であること。これらは偶然積み重なったのではなく、「見て見ぬふり」を続けた結果です。
厳しい言い方になりますが、「なぜ5年間そのままにしていたのか」という問いから目をそらしている限り、本当の問題にはたどり着けません。
愛情が感じられないのは結果であり、原因ではないのです。
では、5年前に何があったのでしょうか。
大きな出来事があったのか、あるいは小さなすれ違いが積み重なったのか。それは、ご本人にしかたどれない道筋です。
ただ一つ言えるのは、関係というものは「沈黙のままでは修復されない」ということです。
氷が張った湖に石を投げなければ、表面はずっと固いままです。しかし一度ひびが入れば、水の流れは戻り始めます。奥様は穏やかな方で、離婚も望んでいない――そこにまだ可能性があります。
完全に壊れた関係ではなく、「止まっている関係」だからです。
まず必要なのは、「愛情が欲しい」という訴えではなく、「自分はこう感じている」という率直な言葉です。
責めるのではなく、確かめる。
結論を急がず、事実を共有する。
もしかすると、奥様にも言葉にできなかった思いがあるかもしれません。
あるいは、あなた自身の受け取り方に偏りがある可能性も否定できません。
いずれにせよ、扉は外から叩いても開きません。内側にいる人が開けるしかないのです。
そのためには、まずノックをする勇気が必要です。
もしそれでも応答がないときは、そのとき初めて別の選択を考えればよいでしょう。
順序を間違えなければ、後悔は少なくなります。
嫌な現実に目を閉じていれば、問題は静かに深く根を張ります。
しかし、向き合えば、たとえ時間がかかっても変化は生まれます。
今のあなたに必要なのは、「答え」ではなく「対話の始まり」です。

コメント