「ヒザ、痛いねん!」と、弾かれた義母の声がした。
トレーニングを拒否するサインのようだ。
本当に痛いのかも知れないが、
今日も、階段に置いた人感センサーが、義母をキャッチしたが、
11秒で上がってくるスピードに変化は無かった。
叫べるほど、元気だと言うことかも知れないが、
妻にとっては、「痛い!」と聞けば聞くほど、
ヒザの痛みを和らげようと必死になる。
親だから、当然かも知れないが、
私には「痛い!」は往々にして「取り繕い」に聞こえることが多いが、
妻はデイサービスのメニューを使って、家でもチャレンジしようとする。
一つ目は、椅子に座って両腕を前後に大きく振りながら足踏み。
二つ目が、椅子に座って片足の膝を伸ばし下におろす。
義母はデイサービスでやるのと、家でやるのとでは勝手が違う。
妻が熱心にやればやるほど、次第に語気が荒くなっていく。
本来干渉されることが嫌いな義母には、それ自体が苦痛だ。
そのため、トレーニングを中断するために「ヒザ、痛ッ!」となる。
妻もまた「折角やってるのにー!」となってしまう。
さらにゴリ押しをすると、「痛いものは痛い!」とゲームアウトになる。
義母は、夜トイレに行くとき、廊下を四俣の杖を突いて歩く。
転倒しないように用心している。
杖の足はゴムで音はしないが、シューシューとすり足が聞こえるが、
時々、コツ、コツ、コツという音が響くこともある。
まるで子供が歩いているような音だ。
義母は何年も整形外科で、関節内注射を打っていたが、
ヒザより注射の痛みの方が勝ることにようやく気付き止めた。
そのため、日々の健康診断として、
階段の上りのスピードを計り、その変化からヒザの悪化を診ている。
通常11秒で上がってくるスピードも、幸いに3年間ほぼ変化が無い。
時おり用事を思い出し、急いでリビングから出て、
戻って来る時のスピードを計ると2・3秒速いこともある。
「92歳の義母は至って元気だ!」と、妻に言う。
「自分でお尻を拭ける」
「階段を上り下りできる」
「自分で食事ができる」
「だから、それ以上求めることは何も無い!」と、妻に言うが、
妻は義母の一挙手一投足が気になってしょうがない。
しかしながら、自分たちが92歳になって同じことが出来るか?
顔を合わせ、自分たちを鍛える方が賢明だと合意してから、
義母の個人レッスンは終了した。
今ではスクワット、クランチ、ダイアゴナル、プランクがルーティンだ。
超高齢者との暮らしは、見守る勇気と動揺しない心が必要だ。
人が一人増えるごとに生活は大変だ!
だから、焦らず気長にやるのがいいようだ。
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