30代のパート女性は2人の子どもを育てながら、日々幸せを感じて暮らしています。けれども、ふとした瞬間に心に影が差すことがあります。
「もし学生時代にもっと勉強していたら…」
「塾に通わせてもらえていたら…」
「本当にやりたかった職業に就けていたのかもしれない…」
そう考えると、胸が締め付けられるような思いが込み上げてくるのです。裕福ではなかった実家を恨む自分も嫌で、やり場のない気持ちがぐるぐると渦巻いてしまう…。
そんな自分を変えたくて、彼女は今、通信教育で資格取得を目指して努力しています。
「自分はやり直すチャンスを持っている」
「子どもたちには好きなことを思い切りさせてあげたい」
そう願いながら、学費を少しずつ貯めています。しかし、心の奥底には、まだ誰にも打ち明けられない思いが眠っています。それは、将来への不安や、自分自身の夢への未練です。
ここで大切なのは、まず夫にその気持ちを素直に話すことです。
家事、育児、そして自分自身の夢を背負い込んだまま、一人で悩み続けるのはとても苦しいことです。例えば、家を夫婦で一緒に建てるときのことを想像してみてください。
どんな家にしたいか、間取りはどうするか、どんな家具を置くか――。
もし奥さんだけが一人で考えて決めてしまったら、夫は「自分の家」という実感を持てないでしょう。でも、二人で何度も話し合い、一緒に悩んで決めた家なら、お互いが誇りを持てるはずです。
夫婦の人生もそれと同じです。
妻だけが悩み、夫だけが働く――これではいつか心の距離ができてしまいます。「何をしたいのか」「いつまでにどうしたいのか」、具体的に言葉にして夫に伝えましょう。
夫婦はもともと他人です。気持ちが伝わらないことは当たり前です。だからこそ、言葉にして伝える努力が欠かせません。
夫婦で話し合い、ともに試行錯誤していくことは、まるで荒波を乗り越える舟のようなもの。一方がオールを手放せば、もう一方に負担がかかり、舟は真っ直ぐ進めなくなります。
二人で力を合わせて漕ぐからこそ、どんな波にも立ち向かえるのです。過去は変えられません。けれど、未来は夫婦で話し合うことで何度でも作り直せます。
一人で抱え込まず、夫婦の課題として一緒に悩み、前に進むことが、人生の価値をより高めるのです。子育てに忙しい今だからこそ、まずは小さな一歩から。
今夜、夕食後に「実はね…」と自分の気持ちを語り始めてみましょう。それが、あなたと家族の未来を変える最初の一言になるのです。
読売新聞[人生案内:進路選択の過去引きずる」2025年8月をレビュー
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