定年を迎え、生前整理を考える人は少なくありません。しかし、整理を進める前に、一度立ち止まって考えることが重要です。親が元気で、日常生活に不便を感じていない場合に「不要だから捨てよう」とするのは、親の意向を無視した一方的な行動となりかねません。親が大切にしている物を安易に処分するのではなく、その物に込められた思い出や人生の物語を理解することが求められます。
例えば、私が義母の工業用ミシンを処分しようと考えたとき、義母は強く反対しました。それは、義母がミシンを通じて、自身の存在価値や現役感を訴えていたからかもしれません。この経験から、親が元気なうちに、生前整理を進める前に、親が何を大切にしているのかを共感し、理解することの重要性を痛感しました。親の持ち物には、その人の人生を支えた証や、思い出が詰まっています。だからこそ、子供の理屈では簡単に捨てられるものではありません。
最初に行うべきことは、親が何を支えに生きてきたのか、心のよりどころが何であるかを理解し、その価値観をリスペクトすることです。捨ててはいけないもの、変化させるべきもの、残すべき大切な情報を親と共に共有し、話し合うことが、生前整理を進める上で不可欠です。親の価値観を尊重しながら整理を進めることで、親との心の壁が取り除かれ、土地や建物、葬式やお墓の希望、さらには親が好意を寄せていた人々についての話し合いもスムーズに進められます。
結局、生前整理で本当に整理すべきなのは、モノではなく心の奥底にあるわだかまりなのかもしれません。急ぐよりも、共感してから行動に移す方が、結果的に良い方向に進むことが多いのです。親の思い出や価値観を尊重しながら、共に歩む生前整理を考えてみてはいかがでしょうか。
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