母の「火傷のまじない」は家族にとって驚くべき効果をもたらしました。1歳の娘がファンヒーターで火傷をしたとき、オロオロする私と妻を横目に、母はコップに水を持ってくるよう指示、小声で呪文を唱えながら泣きじゃくる孫の手に一気に水を吹きつけました。その後、冷たい水で手を冷やすと数日で腫れが引きました。
数年後、再び娘が火傷をしたとき、妻は同じ「まじない」を再現し、見事に効果を発揮しました。このまじないは「さるさわのいけの だいじゃは なみにゆられて はいになる」という呪文を3回唱え、水を吹きつけるもので、母から教わったものでした。それから数十年も経った今でも、「邪魔にならないから聞いておきなさい!」と言った母の一言が蘇ります。母から教わった奇跡は、子から孫へと伝えられています。
「まじない」に出てくる猿沢池の伝説には大蛇が登場し、これが「まじない」の由来とされています。猿沢の池は、奈良八景のひとつとして興福寺五重塔に実存しており、蔵人得業 恵印(くらうど とくごふ えいん)という僧が、猿沢の池に立札を立て「何月何日、この池から竜が昇天するであろう」という噂を流し、結果、何も起こらなかったという逸話があります。
また、出雲大社の大国主命(おおくにぬしのみこと)は、福の神、平和の神、縁結びの神、農耕の神、医薬の神として目に見えない世界の統治をして、因幡(いなば)の白ウサギにも見られる、あらゆる迫害を受けながらも、「まじない」や呪術によって難を克服したと伝えられています。 「まじない」とは、目に見えない世界に通じるキーワードとして、いつでも誰でもが唱えることで霊力を発揮します。
日本各地に伝わる火傷の「まじない」も、猿沢池と大蛇が関わっており、伝統と信仰の力を感じさせます。この「まじない」は目に見えない世界へのメッセージとしてこれからも伝えられていくでしょう。
コメント