ドスン! ドスン!と玄関の方から鈍い音がした。
聞きなれない音に2階から急いで降りて行った。
義母が、玄関ドアの内側からカギをかけ、
玄関の外からドアを閉めようとしていた。
ドアの内側からデッドボルトが出たままになっているのが見えた。
義母は一旦、カギを開け、また、直ぐにカギを閉め外に出たようだ。
だから、ドアを閉めようと思っても、デッドボルトが邪魔で閉まらない。
ドスン! ドスン!という音は、デッドボルトがドアサッシにぶつかる音だった。
突然の出来事に目を疑ったが、外に立っている義母に、
「お母さん! 内側ですでにカギが閉まっているので、
一度開けますから、もう一度カギを閉め直して下さいねぇー」と、
デッドボルトを元に戻し(解錠)義母に声をかけた。
義母は、スマートコントロールキーをドアノブに近づけ、
ピッ!という音で、
ようやく、デイサービスの車に乗ることが出来た。
「出かけるとき、カギをかけて出て行って下さいねぇー!」と言う、
私の口ぐせが、義母の脅迫行動を招いたと思った。
デイサービスの車を待たせてはいけないという焦りが、
「何よりも先に、カギをかけなければならない」と頭をよぎったようだ。
ドスン! ドスン!という音に、本人が一番呆れたかもしれない。
義母が帰って来てから、出掛けの顛末を説明したが、
「何のことやら?」と、
カギは外から閉めるもの、中から閉める訳が無い現実に、
自身の行動を振り返るのは不可能だった。
それから4日後、デイサービスに行くとき、
「カギをかけて出て行って下さいねぇー!」と声をかけると、
また、同じ間違いを繰り返してしまった。
「お母さん! カギ閉まっているので、一度、開けますから、
もう一度カギを閉め直して下さいねぇー」と言うと指示に従った。
さらに3日後に、デイサービスに行くときも、
「カギをかけて出て行って下さいねぇー!」と、見送ったが、
結果は同じだった。
義母がデイサービスから帰って来てから、
デイサービスに出かける時の、カギをかける手順を再現して貰った。
今もってカギを開け、その瞬間にカギをかけて出ようとした。
身体が勝手に動いてしまうようだ。
今度は、義母の真横に立ち、間違いを犯す寸前、手に触れ動きを制した。
「お義母さん、ここでカギを、閉めないで下さいね一」と、
何回かトライする内に、自分の無駄な行動に気が付いた。
さらにそれから4日後、
「お母さん! いってらっしゃ~い」と、ただ見送った。
無駄な行動は無くなり、問題は解決されていた。
それから、デイサービスに行くとき、
同じ間違いを繰り返すことは無くなったが、
外出の目的が変わると、同じ間違いを繰り返す可能性があると思った。
義母が1人で医者に行く機会を狙って確認することにした。
「お母さん!カギをかけて出て行って下さいねぇー!」と、声をかけた。
義母が、玄関ドアのカギを開けた。
次に、ドアを開け、外に出ようとした瞬間カギをかけた。
「お義母さん、もう一度お願いします!」と声をかけた。
今度は、直ぐに無駄な行為に気が付き、
何ごとも無かったように出かけて行った。
それから、1年経ったが間違うことは無くなった。
上手く行って、良かった😂
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