「母の火傷のまじない」の成果は、人の話を聞く大切さだった。

母の「火傷のまじない」は火傷の痕跡を消した

よちよち歩きの1歳の娘が、ファンヒータの吹き出し口に触り火傷をした。
泣き叫ぶ我が子に、オロオロする私と妻を横目に、
母は私に、コップに水を持ってくるよう言いました。

母はコップに口を近づけると、何やら小声でぼそぼそ言ったと思ったら、
水を口に含み、泣きじゃくる孫の手に一気に吹きつけました。

次に、泣きじゃくる手を、出しっぱなしにした、真冬の水道水で冷やさせました。
神がかり的な母の気迫に圧倒され、若き夫婦は母の指示に従うばかりでした。

小さな手にできた大きな水ぶくれは、痛々しく親として悔やんでも悔やみきれない思いでした。幸い数日で腫れが引きましたが、富山の真冬の冷水が効いたのだと思っていましたが、それから数年後、また子供が沸騰したお湯を浴び火傷をしました。

妻はすぐさま母に電話をし、以前、目の当たりにした光景を再現すべく、
母の呪文を聞きだしていました。

妻も母と同じように一心に何かを唱え水を吹き付けました。
あれから40年、幸いにも火傷することも無くなりましたが、
私たち夫婦もその当時の娘も、その「まじない」を一時も忘れれることはありません。

「邪魔にならないから聞いておきなさい!」と言った母の一言が、
金科玉条のごとく身体に染みついています。

母から教わったまじないは、子から孫へと伝えられていくと思いますが、
摩訶不思議な言葉がもつパワーは、歴然と火傷の痕跡を消し去りました

母から伝えられた「火傷のまじない」の奥義を伝授

水が入ったコップに、口元を近づけ、

「さるさわのいけの だいじゃは なみにゆられてはいになる」
「さるさわのいけの だいじゃは なみにゆられてはいになる」
「さるさわのいけの だいじゃは なみにゆられてはいになる」


同じフレーズを一息で3回唱え、水を口に含み患部に一気に吹き付けます。

猿沢池の龍と火傷のまじないとのつながり

猿沢池は、興福寺五重塔が周囲の柳と一緒に周囲360メートルの奈良八景のひとつです。

昔々、奈良に、蔵人得業 恵印(くらうど とくごふ えいん)という僧がいたそうです。
この恵印は若かったころ、いたずらで猿沢の池の端に
「何月何日、この池から竜が昇天するであろう」という立札を立てました。

立札を見た人々は老いも若きも「それはすごい。ぜひ見たいものだ」と話しました。
恵印は、『笑えるぜ。おれの出鱈目を本気にして、大騒ぎだ。馬鹿だなあ』と、
思いましたが、面白いから黙っておこうと素知らぬ顔で立札の前を通り過ぎていました。

やがて、そのうわさは大阪にまで広がり、大勢の見物客が集まってきました。
恵印は、『ほんとうに何か起こるのかもしれない。何とも不思議なことだ』と、
他人事のように思いました。

いよいよ当日、道を塞ぐほど人がひしめいた様子に、恵印は、『これはもう、ただ事じゃない。もとは自分のしたこととはいえ、ちゃんとしたわけがあるにちがいない』と、
きっと竜が出るんだ。近くで見よう』と、坊主頭を布で包み近寄りましたが、
池の端は人でごった返していたので、興福寺南大門の壇の上に登って竜の出るのを
今か今かと待っていました。
もちろん龍など出るはずもなく、何も起こらないまま日が暮れていきました。
日本古典文学摘集の『宇治拾遺物語』巻十一ノ六「蔵人得業猿沢の池の龍の事」の龍に、ロマンを感じます。

火傷のまじないは、もしかして出雲大社の大国主命?

出雲大社の祭神は、大国主命(おおくにぬしのみこと)であり「だいこくさま」とも呼ばれています。福の神、平和の神、縁結びの神、農耕の神、医薬の神として祀られている神様です。

日本を創った男神の伊邪那岐命(いざなぎのみこと)女神の伊邪那美命(いざなみのみこと)から生まれた娘が天照大御神(あまてらすおおみかみ)、息子が須佐之男命(すさのおのみこと)、この須佐之男命の子孫が大国主命にあたると言われています。

大国主命が、日本と言う国を治めた後、天孫降臨(てんそんこうりん)で高天原から来た使者が、目に見えない世界の統治出雲に大きな社を祀るという国を譲るための2つの条件を出しました。一方、天照大御神は、大国主命と逆の目に見えることを司った。といわれています。

因幡(いなば)の白ウサギの主人公である大国主命は、兄弟である八十神(やそがみ)から、百足(むかで)と蜂のいる部屋に入れられたり、毒蛇の洞窟で寝かせられたり、草原で火を放たれたり、赤い猪の嘘話で大火傷を負わされたりと、あらゆる迫害を受けたと言われていますが、まさにそのとき大国主命は、まじないや呪術によって難を克服したと伝えられています。

まじないとは、目に見えない世界に通じるキーワードであり、
大国主命に通じる口訣(くけつ)なのかも知れません。
二拝四拍手一拝 (^_^)

各地方に伝わっている火傷のまじない

「猿沢の池の大蛇が火傷して、水なき時はアビラウンケンソワカ」

「火傷を為せど、はれるな、うずくな、あとつくな、薬になれ猿沢の水」

「猿沢の池の大蛇が火傷して痛まずうまず跡つかず」

「猿沢の池の赤大蛇その水取ってひりつけひりつけ」

「さるさわの池の大蛇が火傷をし、この水つけると痛まずはれずあんけんさ」

「猿沢の池の大蛇が焼け焦げて膿も崩れもひるつきもせず」

母から教わった「火傷のまじない」も、各地方に伝わっているまじないも同じでした。
人から人へと口伝いに伝えていくあいだに変化したのでしょうか、
それにしても、全国至るところで、猿沢の池と大蛇が出てくることに驚かされます。

あらゆる「まじない」は、奥義としての秘伝のため、あえて文語にせず、
目に見えない世界への強いメッセージと畏敬の念を強くしたのかも知れません。

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