定年退職前のこころ構え「大島紬の作務衣を作る夫婦の会話」

仙台に居たとき、夜明け前に車を飛ばし遠刈田温泉の神の湯によく通った。
週末は80km離れた山里にある鳴子温泉にも泊まり歩いた。

栗駒山の登山口にある須川高原温泉は、無限に溢れる源泉かけ流しの
加水加温なしの天井の湯だ。

源泉かけ流しの加水加温なしの旅館はどこも宿泊料金が安く、
お膳を彩る食材を活かした素朴な料理は三ツ星以上だった。

残念ながら、今住んで居る関西に火山がない。

東北と同じ風情の泉質を探しても、鉄分が多く含む茶褐色の有馬温泉の濁り湯は宿泊料が高い。青森にある不老不死温泉は、泉温52.2℃の1分間に400Lを湧出する源泉かけ流しの茶褐色のお湯は、湯船に浸かると一瞬にして全身の毒素を洗い流し、身も心もリセットしてくれるがこの上もなく安い。

無いものねだりは良くないが、関西にも源泉かけ流しの施設はいくつもあるが、
加温しているため光熱費がかかり、人件費も高く高級ブランド牛を提供するため、
全てが高くなる。

記念日やお祝いで温泉に行く人はいいが、温泉の自浄効果を知った人間には、
一にも二にも温泉を楽しみたい。日々のたゆまない源泉かけ流しの検索から、
六甲アイランドにある「神戸ベイシェラトンホテル」が目に留まった。

一番は、宿泊料が安いこと。

二番は、源泉かけ流しの自家源泉があること。

三番は、家から80km離れた四方海に囲まれたホテルは、神戸の夜景と共に、
非日常を味わえる手頃な距離にあり、行きも帰りも新たな発見の可能性があった。

神戸ベイシェラトンホテル&タワーズは、地上21階で6階~13階がシェラトンフロア、14階から16階がプリファードフロア、17階から20階の上層階が高級なクラブフロアである。レストランは、1階に大衆的なテラスレストラン、2階に中国料理、日本料理の専門のレストラン、最上階の21階には神戸港・六甲山を見渡せるダイニング、鉄板焼、スカイラウンジがある。

温泉施設は別棟の3階にあるが、スリッパで館内を移動できるものの浴衣着用は禁止だ。クラブフロアと12階のレディースフロアの宿泊者は、浴衣のまま温泉直通のエレベーターを使う。

予約したのは16階で、夕食も朝食もバイキングと呼ばれるブッフェで1階のレストランだ。2人24,000円の宿泊料は最も安いプランで、東北の源泉かけ流しの温泉と同じ金額だ。ホテルのチェックインは15時、チェックアウト12時、旅館はどこも10時がチェックアウトなので朝がゆっくりできて何よりだ。また、駐車料金が24時間まで無料というのも良かった。

2回目もほぼ同じ金額で泊まったが、3回目泊まるときは「作務衣」を持って行こうと思った。

クラブフロアとレディースフロアの宿泊者は、浴衣のまま温泉直通のエレベーターで降り、スッと浴衣を脱ぎスッと風呂に入るが、安い客はそうはいかない。服を脱いだり着たり面倒極まりない。服を脱ぐのはしょうがないとしても、湯上りに服を着直すのは許せない。そのため、部屋に入ったらパンツ一で浴衣に着替え温泉に直行できる「作務衣」が必須だと思った。

作務衣をネットで調べると、外国製の綿素材は数千円、日本製の高品質の綿素材は1万~2万円、日本製の綿とポリエステルの混紡は1万円、日本製の麻100%は4万円、、日本製のウール素材が4万円、大島紬風の亀甲柄の綿素材は2万円、大島紬の外出用の作務衣は20万位だった。

着物問屋で働いてから友禅職人に転職した妻と一緒に専門店に行った。

「この綿ポリの生地、つやもいいしーどう?」と、妻に進言。

「若旦那というより、従業員かな!」と、妻が、ぼそり。

確かに、鏡に映る姿は居酒屋や旅館でよく見かけた光景だった。

「確かに!」と、私。

大島紬の作務衣をハンガーから外して「コレ、いいねぇー」と、私。

妻は、「ふう~ん」と気のない返事。

十数万円の作務衣なんて、もともと論外だったが店を出るための会話だった。

帰り際車に乗り込んで、「作ろうか!」と、妻がーまた、ぼそり。
考えてみたら、浴衣で作った作務衣を何回も着ていたのを思い出した。

しばらくして、外国人が激減した新京極の「さくら」という古着の店に行った。
大島紬モドキの亀甲柄の羽織を3,500円で買った。妻の指示で、何着も着替えさせられ、作務衣がしたてられる大きめの羽織を選んだ。

また、しばらくして、外国人が激減した奈良公園の近くの「さくら」に行った。
今度は女物柄の大島紬モドキの着物を3,300円で買った。
本場大島紬の「証紙」がある泥染めの反物を手に取った。妻の目は肥えていた。

妻が言うには、「銘仙は先染めの平織りのれっきとした絹織物」だとか、それでも、秩父銘仙、伊勢崎銘仙、足利銘仙、桐生、八王子、川越といろいろあり、桐生は京都の西陣と並び歴史の古い織物産地で、西の西陣 東の桐生と言われたとか・・

落語家の立川談慶さんが、「呉服屋、スナック、新聞販売店の3つの業種が、落語家と同じくらい不況に強く、なかなか潰れない業種である」との記事をみた。

確かにそうかも知れないと思った。

何故なら、妻の親友の呉服商が「北海道の売り出しが中止なって、返ってきた荷物の整理が大変だ」と聞かされたばかりだった。明らかに、コロナのせいだった。
考えてみると、妻の知り合いの友禅作家はいまだ健在だ。
外国産に押されているとはいうものの商売が続いているのは有難いことだ。

大島紬などブランドものの響きはいいが、何世代にも渡って使い続ける覚悟はない。
本物よりも、今使える居心地がいいものがいい。
3回目に泊まりに行くのが楽しみだ!

定年退職前のこころ構え     「報連相と、妻との会話」

報告、連絡、相談の「報連相」は、
仕事をする上で、最も常識的な業務マナーだと言われている。

「報告」は、指示された仕事の結果や状況を伝える業務で、
いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どうやって、といった内容で、
整理して口頭とメールで伝え記録を残すことも大事なことである。

「連絡」は、目標実現に向けての行動スケジュールや状況を仲間に報告し、
情報を共有し方向性と行動力を維持させる業務で、
報告同様に、口頭とメールで伝え記録を残すことが大事である。

「相談」は、感性や能力が低く思える上司や第三者に対しても、
自分の考えを聞いて貰い、第三者の意見を多面的に聴取し、
確実な完遂のための必要な行動であり知恵であり知識である。

相談は、相談者の能力の如何を問わず、
リスク分散を含めチームプレーには不可欠なことである。

上司に「そんなことも知らないのか!」と怒鳴られることを想定しつつも、
叱られることを前提に話すことが、自己実現を可能にする確実な一歩である。

能力のない上司やパートナーに出会うことは、生前に、乗り越えるための
自分が作った仮想現実なのである。と考えたいものだ。

「逃げれば不安は倍に向かえば半減」を、報連相を実践することで
恐れるに足らず」の不動心に近づく。とも考えたいものだ。

報連相は、互いに真向かいに座り、同じ目線で最後まで話を聞くことから始まる。
相談者の目線を通じ、見たこと、聞いたこと、感じたことを聞き出す。

聞き取るテクニックは、「立ち向かう人の心は鏡なり」がキーワードである。

聞き取る人の心に不安や焦りがあると、正確な情報が得られない。
心が霞んで波だっていると、相手の説明もまた霞んで揺らいだものになる。
というものだ。
自分の心の鏡に映る言葉や表情は、自分自身の姿なのだ。

昨日、「隣の空き地に犬の糞を拭いたティシュが捨てある」と、妻から話があった。

どんな話も、一刀両断にする性格を察してか、おそるおそるの報告だった。

「人の空き地に、ましてや家の境界面にティッシュを捨てるなんて信じられない」
との報告であり、クレームでもあった。

「そりゃあ、そうだぁー」と、私も、賛同したものの、

それで、オレに何をしろと?・・・
もし自分だったら、その場で、直ぐにゴミ袋に捨てていたのに、

だから、妻は? 一体何を? 
ただの連絡なのか?
はたまた、相談なのか? 次の言葉が続かなかった。

妻は、
「飼い主が許せない、地獄に落ちろ」とまで、言ったかどうか定かではないが、

私は、「車の窓からゴミを捨てるのも居るし、道端に唾を吐くのも居る」

「気にしてたら切りがない。そんなふうに思わなくても」

「いつか、バチがあたるから、ほっておけばいい!」と・・・

妻は、「片付けるのはワタシ、不公平!」と、

「確かに、ごもっとも!」と私。

「生きてるとき何も無くても、死んでから巻き戻した自分の一生を見て、
自分で責任を問うんだから、ホッテおけばいい」と、いつもの私。

妻は、シェパードを世話していた経験と、
正義感の強さから、許せなかったのだと、自分を納得させた。

そして、妻が突然に、
「割れ窓理論、から言ったら、花でも植えようか!」と提案してきた。

思わず、「確かに!ーだったら、鳥居を作って家の境界に並べようか!」と、私。

「赤いペンキあったかなぁー、どんな花植えようか!」

「花を植えるにも、鳥居をおくにも、取りあえず、不動産屋に了解が必要だぁ!」

「電話してから、メールで確認しておいた方がいいよ!」と、
「連絡」の極意を強調する私。

そう言ってから、ようやく正気に戻った。

そもそも、「割れ窓理論」なんてっていう言葉、今までオレは知らなかった。

そこで、真向かいへの妻への目線が変わった。

直ぐに、Googleで検索・・・なるほど!

「それでどうする?」と、妻に相談する私。

「だったら、今直ぐ、そのゴミ、片付けておこうか!」と、提案。

二人で、ティッシュを拾いに行った。

回収するとチョット事情が違った。

犬の糞を拭いたティッシュが捨てられていたように思えたが・・・

犬の糞のようでもあり、何かをぬぐったのは確かだが、よくわからない。

家の境界に並んで捨てられていたようにみえたティッシュも、

風が吹いて境界に吹き溜まったようにも見えた。

二人とも一気にトーンが落ちた。

花を買いに行く話しも、不動産屋へ連絡する話も、自然消滅した。

結局、振り返ると、妻は、最初から「割れ窓理論」を使って解決したかったようだ。

聞く側の力量が試された思いだった。

「報連相」が必要なのは、会社の中だけではないと痛感!!

むしろ、退職後にこそ報連相の場面が多くありそうだ。

もう一度、ホウレンソウを勉強しようと思った。

定年退職前にすること     「開いたことのない傘」     はもういらない。

2019年12月8日日経朝刊、出光興産会長の月岡隆さんのインタビュー記事を読んだ。

1984年北海油田開発でロンドンに駐在した時に買った、
「開いたことのない傘」がいつも会長室に置いてある。
英国では紳士は晴れた時も傘を持ち歩き、雨に備えたことにならったようだ。

イギリス紳士がもつ「傘」とは一説には、
農具であったり、
武器であったり、
権力の象徴であったり、
男の誇りであったり、
統率のためであったり、
錫杖(けんじょう:正教会・東方諸教会の主教が奉神礼の際に用いる杖。
モーセが旗竿の先に掲げた青銅の蛇にちなんだ。ジェズル)であったり、
指揮棒であったり、
様々な顔をもっていたようだ。
月岡隆さんにとっては、「仕事は天気と同じで晴れもあれば雨もある
いつか雨が降るんじゃないか」と、慎重に構えるための備えだったようだ。

自分はというと、自分にとって「開いたことのない傘」は何だったのか?

そもそも、そんなもの自分にはあったのか?
悩んだ末に、それらしきものが一つ見つかった。
「医業経営コンサルタント」という資格だった。
医薬品メーカー在籍中、MR資格に箔をつけるためだった。

そのお陰か多くのヘッドハンティングの声がかかった。
しかしながら、困難を乗り越え未踏の分野を切り開く勇気も気概も無かった。
あらゆる変化に対応できる強い気持ちは自分には無かった。
従って、困難を乗り越えるための武器にはならなかった。
年間12万円の会費と講習費出張費で年間数十万円の費用を20年近く会社が支出した。自分だけでなく、会社も箔をつけるのに必要な経費だった。
お陰で地位も給料も上がった。
サラリーマン生活を優位に送るためだけの「傘」だった。

自分にとって、これから「慎重に構えるための備え」は何かを考えた。

一つ目、慎重に構えるための備えで必要なのは「防災準備」だった!
❶背の高い家具を置かない。置く場合は壁に固定。
❷水、米、石油、石油ストーブ、カセットコンロを準備。
❸非常用トイレ、匂いを閉じ込める袋を準備。
❹人数分のヘッドライト、ランタン、皮手袋、携帯ラジオを準備。

二つ目、慎重に構えるための備えで必要なのは「地震保険」の見直しだった!
❶火災保険:火災、落雷、水災、水漏れで建物や家財に損害が生じた場合支払われる保険金。
❷地震保険:地震、噴火、これらの原因による津波で損害が生じた場合支払われる保険金。

地震、噴火にまつわる津波による損害は火災保険では補償されない。
地震を原因とする火災事故が起きた時、保険金は火災保険からは支払われず、
地震保険のみが支払われる。火災保険と地震保険を分けて考えなければならない。

三つ目、慎重に構えるための備えで必要なのは「健康維持」の確認だった!
老後に備え健康維持に何が必要か?(青線)また、健康維持に現在心がけていることは何か?(赤線)を比較すると、

散歩やスポーツ・運動をする:(必要77.1%、現在44.2%、差32.9ポイント)、
規則正しい生活を送る:(必要72.6%、現在47.2%、差25.4ポイント)、
栄養のバランスのとれた食事をとる:(必要69.4%、現在47.4%、差22.0ポイント)、休養や睡眠を十分とる:(必要71.0%、現在51.6%、差19.4ポイント)
必要なことと分かっていても現実は中々出来ていない。

平成25年度 高齢期に向けた「備え」に関する意識調査結果より

慎重に構えるための備えは、先ずからだの健康に気を使うこと。
バランスの取れた食事、適当に体を動かすこと、
そして、長すぎず短すぎないほどほどの睡眠。
昔ながらの食材、大豆などの豆類、ゴマ、米、わかめや海草、野菜、魚、しいたけ等のきのこ、芋類、ヨーグルト、果物など、
何でも、ほどほどに、喜んで頂く感謝の気持ちを持ち続けことが今必要のようだ。