TLCが光の害から守るセーフティーネット

 

飲み忘れや飲み残しの薬が放置

処方せんの薬、ドラックストアの薬、売薬の薬、どういう入手かは別にして、余った薬は服用しない方がいいに決まっていますが、捨てるのももったいない、医者に行ったらお金がかかるという、それぞれの理由で無期限に保管されています。転ばぬ先の杖とばかりに一人ひとりの引き出しに溜めこまれ、いつかその出番を待っていますが、本当にその出番は安全なのか「余った薬を飲む」2つのリスクを検証してみました。

 

リスク1:
余った薬をまた飲む。医師の診断に基づかない薬物治療は危険

医師の診断を仰がないで、余った薬やドラックストアの薬を飲むことはよくあることですが、症状の改善もなしに漫然と薬を飲み続けることは大変危険なことです。「頭が痛い」「足腰が痛い」「腹が痛い」いろんな症状は各々の原因があって身体に現れたものであり、医師の診断に従って薬を飲むことが基本であり何よりも確定した診断が先決だと思います。

 

厚生労働省は、「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、個人が、平成29年1月1日以降に、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるもの」と新制度を発表しました。

自分の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすることである。言っていますが、「軽度な身体の不調」こそ病気の兆候です。果たして素人に軽度か重症か判断できるのでしょうか。

吐き気、ゲップが出やすい。疲れやすい。胸やけをよくする。いつもお腹が張っている。食物が食道の奥で詰まった感じがする。上腹部に痛みや違和感がある。便が黒い。貧血気味である。などの症状は胃がんの初期症状の一例です。いつもの症状だから、仕事が忙しいからという理由で発見が手遅れになるケースもあります。おかしいな?と思ったら医師の診察を受け診断結果を待つのが急がば回れだと思います。

 

単身赴任中、胃の調子が悪いといってH2ブロッカーで症状を抑えていた同僚が若くして亡くなりました。一人暮らしの寂しさと、仕事のストレスを解消するため、毎晩寝酒をしていたのが原因でしたが、同時に習慣的に飲んでいた薬がガンを隠蔽(いんぺい)してしまいました。症状の原因を特定しないまま素人判断で薬を飲み続けたことが亡くなった本当の原因でした。医師の診断に基づき治療を行っていくことがセルフメディケーションにとって最も大事なことだと思います。

 

リスク2:
余った薬をまた飲む。ピロ包装やPTPから取り出した薬は危険

薬局では調剤や保管について、温度、湿度、明るさなど万全の注意を払って薬の安定性を確保していると思いますが、家に持ち帰った薬は、テーブルや出窓、テレビ台の上、引き出しなど手の届きやすい場所に置かれています。時にはピロ包装から出して、PTPシートから取り出し日光にさらされている場合もあります。しかしながら、たとえ袋に入ったままでも、箱に入ったままでも、薬にとっては薬局の保管環境より過酷な環境であることに間違いありません。

光に対する薬の安定性は低い

製薬会社が病院や薬局に出している添付文書には以下のような注意書きがあります。

❶「本剤は吸湿性があるので、服用直前にPTPシートから取り出すよう指導すること。また、できるだけPTP包装のまま調剤を行うこと。」

❷「吸湿性を有するのでPTP包装のまま保存すること」

❸「分包した場合には,湿気を避けて保存すること。なお,自動分包機内での保存は避けること。」

❹「光及び湿気を避けるため、PTP包装のまま保存すること」

❺「使用期限内であっても、アルミピロー開封後はなるべく速やかに使用すること。」

❻「本剤は吸湿性が強いので、アルミピロー開封後は湿気を避けて保存し、服用直前までPTPシートから取り出さないこと(一包化調剤は避けること)。なお、やむを得ずPTPシートから取り出して保存する場合は、湿気,光を避けて保存すること。」

❼「本剤をPTPシート又は瓶から取り出して保存する場合は、湿気、光を避けて保存するよう指導すること。」

❽「割後は早めに使用すること。分割後に使用する場合には、遮光の上30日以内に使用すること。」

❾「本剤は光に不安定であるため、服用の準備ができるまで開封しないこと。柔らかい食物、調製ミルク又は母乳と混ぜた場合も、放置せずに直ちに(15分以内に)服用すること。本剤は光に不安定であるため、再分包しないこと。」

❿「本剤は光に対して不安定なため、服用直前にPTPシートから取り出すよう指導すること。」

 

調剤薬局で家に持ち帰る薬について、家での保管条件について細かく指導している様子を見たことがありません。ドラックストアで購入した場合は、パッケージに「使用期限」や「直射日光の当たらない湿気の少ない涼しい所に保管して下さい」といった注意表記がありますが、調剤薬局で貰う薬袋には注意書きはありません。注意書きがあろうとなかろうと車の中に薬を放置していい訳がありませんが、様々な劣悪な環境において化学物質である薬はあらゆる人為的障害や自然障害を受けるリスクがあることをもっと認識すべきだと思います。

 

製薬会社の光の安定性の基準

製薬会社の光に対する安定性については、薬局で薬を調剤する段階から患者が薬を飲むまでのデータは何も無く、工場での製造から出荷、医療機関への納品までの安定性は保証されていますが、薬局で開封し、患者が薬を飲む段階では安全性を担保するデータは何もありません。

 

製薬メーカーの試験は、蛍光灯を光源としており太陽光など自然光での試験は行っていません。また、安定性試験は薬を静止した状態で検査をします。患者が薬を袋から取り出して部屋を動き回った場合は薬が光にあたる面積や光量が増え障害を与えることも考えられます。

 

製薬会社の試験では、120万ルクス/時間の条件を満たすのに、1000ルクスの照度で1200時間(1日12時間の照射時間で約3ヶ月以上に相当する長期間)を照射することを安全性の基準としています。日中の太陽光は10万ルクス以上の照度があります。この条件では12時間約1日分にしか相当しません。

 

飲み薬は概3年の使用期限がありますが、薬局で薬棚に長時間ある薬は使用期限が長くても安定性は低下していると想定されます。一方使用期限が残り1ヵ月でも箱から出して直ぐであれば安定性は全く問題ありません。但し、シートから取り出した錠剤やカプセル、一包化の場合、開封した目薬・シロップ・液剤、粉薬、薬局で混合した塗り薬の場合は安定性が低下しており使用は中止すべきだと思います。

 

不覚にも事務所で日焼け

以前、事務所で首だけ帯状に日焼けしたことがありました。

地上23階建ての南側にある事務所は1日中日日当たりの良い環境でした。引っ越して間もなく耳の後ろから首にかけて違和感を覚えました。ブラインドを全開にした結果、想像以上の日差しの強さに日焼けしました。

太陽光は恵みと同時に光害もあり、カーテンやじゅうたんの変色、服が色落ち、かばんが色あせするなどの障害があり人間には皮膚癌、白内障、アレルギー疾患などに繋がる有害性があります。

照度計で測ったところ、窓ガラスから50cm離れたところで10,000ルクスあり、窓に密着して測ると30,000ルクスまで一気に跳ね上がりました。日焼けは、日焼け止めクリームで予防できますが、日焼けによる変色や退色は目に見える変化だけでなく目に見えない変化もあり、薬もまた光に対して敏感に反応し未知なる物質を生成しガン化する物質もあります。

 

雪山と日常のルクス

・雪山・真夏の海岸で、晴天のときの太陽光は、100,000ルクス

・晴天の午前10時頃の太陽光は、65,000ルクス

・晴天の午後3時頃の太陽光は、35,000ルクス

・曇天の昼の太陽光は32,000ルクス

・ろうそく、ライターの明るさ15ルクス。

ルクスは光に照らされた面の明るさ、光源から発した光が照射対象の床や壁に当たった明るさを数値化したものですが、私の首に当たっていた10,000ルクスから30,000ルクスは相当強い光でした。

 

人には太陽光の紫外線は有益

太陽光の紫外線は、シミやシワ、美肌に大敵だとする一方、紫外線を適度に浴びることが心のバランスにもいいとする報告もあります。また、太陽光を浴びるとビタミンDがつくられ丈夫な歯や骨を作り、更に免疫システムの働きを助けて呼吸器感染症を予防、炎症を抑え、血管や心臓病の機能を改善し、細胞レベルの老化を防ぐなど多数の報告もあるようです。

 

博物館や美術館にとって光は大敵

博物館や美術館が所蔵する文化財は人の目視で絶えず管理されており、湿度に弱い文化財は展示ケース内の湿度を一定に保ち、文化財に適した湿度となる調湿剤をケースに入れ展示されます。色あせしやすい染料を用いた浮世絵版画や染織品にとってはまさに光は大敵です。因みに最もデリケートな文化財は50ルクスの明るさで照度管理されています。

 

日常生活のルクス

・ショーウインドーの重要部2000ルクス

・工場の精密機械、電子部品の製造、印刷工場では1500ルクス

・駅出札口、精算窓口、手術室は1000ルクス

・設計室、製図室、レジスタ、エスカレーターの乗降口は750ルクス

・診察室、会議室、図書閲覧室は500ルクス

・受付、化粧室、学校の教室・教員室は300ルクス

・トイレ、洗面室、更衣室は200ルクス

・廊下、通路、出入り口、病室は100ルクス

・屋内非常階段は50ルクス

文化財の50ルクスは屋内の非常階段の明るさと同じでした。

 

TLC検査が安全の指標になる

化学物質である薬は、開封した段階から自然障害に加え人為的障害が加わり、徐々に、時には一気に劣化し変化する可能性があると思いました。その為、薬を保管している環境ごとに光の安定性を薄層クロマトグラフィー(はくそうクロマトグラフィー、thin-layer chromatography:TLC)という方法を用いて検査することがセーフティー・ファーストに繋がるのではないかと思いました。病気を治す薬が服用段階で障害があったとしたら、症状の悪化だけに留まらず新たな病気を誘引する可能性が否定できないとすれば、まさに百害あって一利なし。もったいないはほどほどにしなければならないと自らを戒めました。

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